Categories: ワンピース

『ワンピース』や尾田栄一郎に影響を与えた歴史や作品を考える。

 

時代の流れが人に影響を与え、人が作品を作る

 

MEMO

この記事は、上記の記事の『LEVEL6』に該当する記事です。ぜひ一度そちらに目を通してください!

 

尾田栄一郎の誕生年の1975年には、タイガー・ウッズベッカムも誕生しました。この年にはスエズ運河も開港が再開されます。スエズ運河は、第四次中東戦争が終結しエジプト・イスラエル間の関係がやや落ち着いた1975年に再開されるまでの8年間閉鎖されたままでした。『三つ子の魂百まで』と言いますが、彼が生まれ、育った時代に何があったか。そして何が彼に影響を与え、『ワンピース』に繋がったのか。この歴史年表を見ながらそういうことを考えると、作品に登場するキャラクターの性格やストーリーが、少し鮮明になります。

 

 

例えば、現在『巨人の星』や『アタックナンバーワン』、『ガラスの仮面』のようなスパルタに近い熱血漫画は少年少女に好まれているでしょうか。時代の流れが人に影響を与え、その人の作品に影響します。

 

時代が生み出す哲学者

例えば下記の記事に書いたアイルランド出身で、イギリスの哲学者、エドマンド・バークは、イギリスの伝統的な保守主義を熱烈に擁護しましたが、そこには当時問題となった『フランス革命』の影響がありました。

 

 

フランスは、『自由、平等、愛』を主張して、フランス革命を起こした。

 

 

しかし実際には、その理想を大きく逸脱し、多くの血を流した。イギリスのバークは、

 

エドマンド・バーク

立つべき者が、人の上に立っているんだ!

 

という考え方で、伝統や階級を正当化したのです。それを、急な革命でそれまでの歴史をすべてひっくり返そうとすると、様々な問題が起こる。このような保守的な考え方でバークは、『近代保守主義の精神的父』と呼ばれるようになります。

 

 

肩身の狭い思いをした人々

[運営者作:竈門炭治郎]

 

例えば、『鬼滅の刃』の熱烈なファンが私に、 『悟空とルフィの男性主義的な考え方は正直痛かった。その点炭治郎君は・・』などとコメントしてきたことがありましたが、竈門炭治郎のような優しさがにじみ出るようなキャラクターが一世を風靡するようになったのも、時代の影響だと言えます。女性は長い間肩身の狭い思いをしてきました。ヨーロッパ史上で初めて女性で首相になった人物、マーガレット・サッチャーは、そういう窮屈な時代にイギリスの首相を務めあげた。

 

 

例えば、『ライトスタッフ』という映画は有人宇宙飛行計画”マーキュリー計画”に従事した、7人の宇宙飛行士の実話を基に描いた作品ですが、登場する職場であるNASAには、黒人の姿がありません。この時代は、白人と有色人種の分離政策が行われていたのです。差別されていた。しかし2016年の『ドリーム』という映画では、その時確かに存在していた黒人女性たちの姿が描かれます。時代が人に影響を与え、そしてそれが人が作る作品に影響を与えるのです。

 

 

今、『招かれざる客』という1967年に公開された映画を観ると強くジェネレーションギャップを感じることになりますよ。この黒人差別がまだ根強く浸透していた時代に作られた映画では、黒人が差別されて当然という初期設定の中で、物語が進んでいきますからね。時代が人に影響を与え、そしてそれが人が作る作品に影響を与えるのです。

 

 

 

宮崎駿の作品たち

 

宮崎駿は『もののけ姫』を公開した1997年に、盟友である高畑勲に対し、

 

宮崎駿

ファンタジーが作れなくなったのか知らないが、私はああいうものは作ろうとは思わない。

 

と彼の作品に文句を言っていました。しかし、2011年に東日本大震災が起き、

 

宮崎駿

もうファンタジーは作らない。

 

と意見を変えます。時代が人に影響を与え、そしてそれが人が作る作品に影響を与えるのです。

 

 

宮崎駿の伝説の作品『風の谷のナウシカ』には有毒なガスを発する菌類の森、『腐海』と呼ばれる森に地球が覆われている様が、描かれています。そこには、『人間は地球の加害者だ』という宮崎駿の思いが反映されています。彼が目で見て、耳で聞き、指で触れ、肌で感じたものが思想となり、その思想がクリエーターの作品に影響を与えるのです。

 

 

この宮崎駿と言えば、「クルミわり人形とネズミの王さま展」というジブリ美術館の展示の特集で、尾田栄一郎がこう答えています。

僕は世の中にある物語で、「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」は2時間モノの作品では誰にも超えられないと思ってるんです。それぐらいパーフェクトなお話なんですよ。あれを作っちゃったら、もう自分でも超える意味がなくなると思う。(略) 宮崎さんは、一生かけても時間がないくらい、描き切れないほどの映像を頭のなかに持っているんだと思うんですよ。なのに、なんでもつじつまを合わせなきゃいけないとなると、描きたいものを削らなきゃいけなくなる。

 

だから、宮崎さんは、もうそれをしたくないんだ。つじつまが合わなくてもいいから、描きたいものはみんな描くんだという気持ちがある。そういう積み重ねが「千と千尋」以降の映画だったと思うです。(『熱風』7月号 尾田栄一郎「僕は宮崎さんの絵を見られるのがうれしい」)

 

ちなみにこの『つじつま合わせ』という言葉の意味ですが、下記の記事を読めば見えてくるかもしれません。

 

スタジオジブリ作品の裏話や豆知識、また、作品の世界観の奥行きを何階層も深くする濃密な話

 

彼はもちろんジブリ作品のすべてを観ていることでしょう。ジブリ作品を知らずしてワンピースの世界を語ることはできないのです。

 

 

また、今一番下に貼った記事の中に、『ジブリ関連のオリジナル記事』というものが6個程度あります。そこには、スタジオジブリや宮崎駿に影響を与えたもの、歴史、時代、哲学等が記載されています。当然、それらが無ければ宮崎駿の思想はなく、我々が知るジブリ作品のあの姿かたちは存在しないのです。

 

尾田栄一郎が『史上最高』だと思う映画を作った人間の歴史を紐解くことは、ワンピースを考えることに繋がっているのです。

 

 

尾田栄一郎のデザインに影響を与えた7人

 

これはワンピースマガジンの9巻に記載されている内容ですから、コンテンツの著作権を考えてここでは全ては記載しませんが、そのうちの2人に

 

  1. ティム・バートン
  2. サイモン・ビズレー

 

がいます。ティム・バートンと言えば監督した映画に『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』がありますね!あの映画や『アダムス・ファミリー』はスリラーバーク編のモデルにもなっています。

 

 

また、『シザーハンズ』『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』、そして『バットマン』があり、バットマンに関してはサイモン・ビズレーにも関係があります。よく考えると、バットマンってルフィたちに似ていますよね。公式に認められる存在ではないけど、悪ではなく、むしろ悪を倒して自分が信じる道を突き進む。きっとバットマンも尾田栄一郎に影響を与えているでしょう。

 

 

例えばレイジュの毒を使った攻撃は、バットマンの『ポイズンアイビー』の攻撃とよく似ています。実写映画では、『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』に出てくるヴィランで、そこにはティム・バートンは関与していませんが、ユマ・サーマンの美しいポイズンアイビーを見ることができます。レイジュがセクシーで毒を使うことに、何らかの関係があるかもしれませんね。

 

 

2021年2月現在、『レイジュ ポイズンアイビー』と検索しても一件も記事が表示されませんが、こんなにも類似しているのに何の関与もないとは考えにくいですよね。ちなみに、バットマンの実写映画で一番のおすすめは、人気投票で厳選映画300作品のうち、3位を獲った映画でもある『ダークナイト』です。

 

 

 

『ドラゴンボール』の存在

[運営者作:孫悟空]

 

尾田栄一郎はかつてこう言っています。

『ドラマのあるバトル“を精一杯やってますからね。少年漫画って、ホントは「強くなりたい」とか「強い奴と戦いたい」っていうだけで成立するんです。なのに何でドラマを重視したかっていうと、『ドラゴンボール』があったから。普通にバトル漫画を描いたら絶対に比較されて、僕がつぶれると思った。だって自分が夢中だったんだから。そこを避けないと、生き残れないのは困りますからね。』

 

確かに、鳥山明の天才的な発想はある視点からみると無責任です。尾田栄一郎は彼やこの作品にとても強い影響を受け、そして『ドラゴンボールでこうなってほしかった』という枯渇感を埋めるように、そこにはない『物語』を重視した作品を作り、それが『ワンピース』の世界へと繋がっていきました。

 

鳥山明は元々『Dr.スランプ』を描いていた人ですからね。ギャグ漫画の人なんです。だからドラゴンボールでも最初はアドベンチャーだった。ギャグ要素が入った『西遊記』を日本版で気軽に作りたかったのですが、ジャンプの読者のニーズに押され、バトル漫画へと変わっていくしかなかった。世界中の人々を圧倒させるほどの世界観をひょいっと作った鳥山明は天才。何が天才って、それほどのポテンシャルを持っているのに『めんどくさい』からドラゴンボールを描かないんですから。

 

 

かつてのインタビューではマンガ製作の準備・練習が嫌いなことを公言しており、彼ほど資料を持っていないマンガ家はなかなかいないと言われています。ただ実際には裏では努力するタイプで、『漫画はそう甘いものではない』と熟知しているそうで。我々が知らない本当の話は、彼にしかわかりません。

 

MEMO

ちなみに私はここまでに挙げたジブリ作品、鬼滅の刃、ドラゴンボールは全て大好きな作品です。優劣はつけない主義ですからすべてワンピースと同じくらい好きです。

 

しかしとにかく、『歴史や時代が人に影響を与える』というなら、尾田栄一郎にとって鳥山明の存在は、あまりにも大きなものだと言えるでしょう。ワンピース初期の頃のルフィは、どことなく悟空に似ていますからね。ちなみに『千と千尋の神隠し』には、ドラゴンボールとのある関連があります。先ほどのジブリの記事に詳細を書きました。

 

そのドラゴンボール。実は先ほど言ったように『西遊記』がなければ存在していません。鳥山明のwikipediaにはこうあります。

当初は西遊記に格闘漫画の要素を加えた、孫悟空という少年の冒険譚であり、アンケートで反響も無く人気は低迷していたが、格闘大会天下一武道会で人気が出たのをきっかけに、次々に登場する強敵・難敵との戦闘をメインに据えたシリアスな物語となることで人気を獲得し、1986年から1997年まで放送されたTVアニメシリーズは、平均視聴率20%を維持した。

 

ブッダが生み出す『西遊記』

中国の『玄奘(げんじょう)』という僧侶が、仏教の本場のインドの教えを求めて、629年8月、インドへの旅を決意。当時それは簡単なことではなく、数々の試練が彼の前に立ちふさがりました。彼のこのインドへの大旅行は、後に『西遊記』のモデルとなります。

 

 

 

つまり、玄奘がいなければ西遊記はなく、西遊記がなければドラゴンボールはなく、ドラゴンボールがなければワンピースも存在していないかもしれないのです。更に言えば、その玄奘が求めた仏教の教えがなくても同じだった。つまり、物事の発端を紐解いていくと、『ブッダ』という紀元前500年に息をした伝説の人間にまでたどり着くのです。

 

 

私は無宗教ですが、まず自分が無宗教であることの正当性を証明するためにも世界の宗教や、四聖を学ぶ必要があった。四聖とは儒教の始祖『孔子』、キリスト教の礎『イエス・キリスト』、仏教の開祖『釈迦』、古代ギリシャの哲学者『ソクラテス』の、四名の歴史的賢人です。元々はこれで『しせい、ししょう』と呼ぶのですが、私がワンピースの世界の四皇にちなみ、これで『よんせい』と命名。それは2010年頃の話ですが、私は10年以上前にワンピースの世界と世界の四聖たちの世界を繋げたのです。

 

MEMO

勝手にやったことですけど。私の人生では一生こう呼び続けます。

 

 

 

強いられて生まれる伝説

そして当然ながら、ここで言うブッダの前にも歴史がある。この世界は紀元前500年に誕生したのではないのです。

 

『ブッダ』とは、『悟りを開いた者』という意味。『釈迦(しゃか)』とは本人が『釈迦一族』出身であることによる、通称のようなもの。インド語で『シャカムニ』、漢字では『釈迦牟尼』。釈迦一族の聖者という意味が込められていて、よく言う『釈迦』とはその略語です。彼のことはどう呼んでもいいのですが、敬意をこめてブッダと呼ぶ人が多いわけですね。

 

 

本名は『ゴータマ・シッダールタ(シッダッタ)』です。つまり、彼は人間であり、その彼が生きた時代が存在し、その前にも歴史が存在します。この世界の最初の文明は『四大文明』であり、そのうち、彼らがいたエリアは『インダス文明』と『中国文明』です。こと仏教と言うならインダス文明となります。インダス文明を作ったのは『ドラビダ人』です。簡単な流れを見てみましょう。

 

STEP.1
紀元前2500年頃
インダス文明とともに民間宗教が生まれる。
STEP.2
紀元前1500年頃
アーリア人が入ってきて、ヴェーダ教と融合。
STEP.3
インダスの在来宗教と融合
南部インドのドラビダ教とも融合。
STEP.4
紀元前1000年頃バラモン教が誕生
STEP.5
後にヒンズー教が誕生する
STEP.6
これらから独立するように仏教が誕生する

 

当時、ブッダが生活していた場所はヒンズー教の前段階である『バラモン教』が蔓延していた。そして釈迦たち王族は、そこにあるカーストの上層部である『クシャトリヤ(王族)』に属していた。

 

 

出典:http://lucky2zacky.jugem.jp/?eid=813

 

上から順に、

 

  1. 司祭
  2. 王族
  3. 平民
  4. 奴隷
  5. 奴隷でもない人

 

ブッダの父親も、敬虔なバラモン教徒でした。そして、釈迦ももちろん、その影響を受けて生きていました。しかし釈迦は、その『身分差別』に疑問を抱いていました。

 

この考え方は本当に正しいのだろうか…

 

そう考えて、釈迦は『新しい正しい教え』を突き止めようとした。それが釈迦が29歳で旅に出た理由です。そして6年間苦行をし、それでも悟りを得られなくて(答えが見つからなくて)、35歳の時に一週間の瞑想(内観)をしたことで、悟りを得て、ブッダになったのです。

 

 

であるからして、元々そこに蔓延していた『バラモン教』の影響があった。そして、それを打破する教えを誕生させた。そう考えると、玄奘が(危険な目に遭ってでも、命を懸けても、ブッダの説いた真実の教えが知りたい!)と思ったその研ぎ澄まされたブッダの教え(仏教)は、まずブッダが巨大な権力やエネルギーに強いられることが大前提であり、この世界の『歪み』も、必要不可欠な要素だったことになります。

 

STEP.1
強いられる
理不尽な思いや、窮屈な世界を思い知る。
STEP.2
納得がいかない
(このままで本当にいいのか)と考えてみる。
STEP.3
打破する
絶対に今よりも状況が良くなると信じて行動する。
STEP.4
研ぎ澄まされたものが誕生する
それはまず『強いられた』ことが前提だった。

 

『ナイトミュージアム』という映画で、ロビン・ウィリアムズが演じた大統領がこう言うシーンがあります。

『ある者は生まれつき偉大、それ以外は強いられて偉大になる。君にとって、 これが偉大になるチャンスだ。』

 

下の動画の55秒のところにあるセリフで、この動画では違う字幕になっていて、カットされていますが、本編ではそう言うのです。

 

 

皆さんきっと、以下の記事を読めば目から鱗が落ちますよ。私は、ただ一つの映画のセリフに影響されてここにこれを書いているのではないのです。

 

 

先ほどの『風の谷のナウシカと環境汚染』について思い出してください。あの名作は、環境汚染がなければこの世に誕生しなかった。

 

つまり、ただ自分が目で見て感じた『ワンピース』だけに囚われてはいけません。それを作った『尾田栄一郎』、そして彼に影響を及ぼした『スタジオジブリ』、『ドラゴンボール』やそれに影響を及ぼした『西遊記』、そしてそのモデルとなった『玄奘』、彼が追い求めた『ブッダ』の教え、そしてブッダが強いられた理不尽な世界

 

すべては繋がっているのです。

 

注意

人為的な環境汚染や、理不尽な世界の正当化ではないので注意です!

 

『わりい おれ死んだ』

 

何だかこの話は『天竜人と奴隷』や、それに抗う『革命軍』の話と無縁のようにも見えませんよね!先ほどルフィの絵を載せましたが、ゾロがMr.1にお礼を言い、永遠のライバルである鷹の目に頭を下げ、ルフィが2年の修業を必要だと思い、それまでは『風林火山』の『火』のモード一色だったのに『山』に徹するべくその態度を変えさせられたように、彼らが夢を叶えるためにも、彼らにとっての大きな試練に直面することが必要でした。

 

強いられて生まれる伝説がある。しかしもちろんすべての人がその抑圧に耐えられるわけではない。それはつまりレイリー曰く、

 

ブッダも、玄奘も、尾田栄一郎も、ルフィやゾロたちも、共通点は『確信する強さ』を持っていたこと。ルフィとブッダというのはその気質的に、似たところがあるのです。

 

よく考えてみればわかるのですが、ルフィというのは特に玄奘のように勉強を積んだ人間ではありません。どちらかというとそういうことはロビンがやっています。ルフィは違う。行き当たりばったりで、だからこそ先ほど『火のように燃え続ける』人間だと言いました。しかし、思い出してみましょう。

 

彼は目の前で『絶対に納得がいかないこと』が起きていた時、それをそのまま見て見ぬふりをしてきたでしょうか?もし、していないなら、彼のその気質はブッダによく似ている。いや、四聖全員に似ています。

 

 

孔子は、今でこそ中国を代表する大学者や聖人とされていますが、同時代人の多くからは、出来もしないことをしようとしている身の程知らずや物好き扱いされていた(憲門第十四-四十)。ソクラテスキリストは、無実の罪なのに冤罪を着せられ処刑されています。ブッダも、バラモン教(現ヒンズー教)のカースト制度を否定したことで、バラモン教司祭の強い反感を買い、嫌がらせをされていたのです。

 

つまり、彼らは全員ルフィと同じように、自分の信念を貫くことで巨大な権力やエネルギーから抑圧されるリスクに直面していました。しかし、貫いた。そのうちの半分は、それによって命をも失うことになった。それはレイリー曰く、彼らがとても強い人だったからです。

 

[出典:ワンピース]

 

私は『ワンピース』の読み切りを読んだ時のことを今でもよく覚えていますよ。その他の記憶は曖昧なのですが、その時の場所と、ワンピースの映像が頭に焼き付いています。それは、シャンクスが自分の腕を代償にして、ルフィを助けたシーンでした。

 

とんでもない漫画に出会ったぞ・・

 

そう強く思ったことで脳裏に強く焼きつき、記憶となって留まり続けているのでしょう。ルフィにゾロに、シャンクス。彼らのように竹を割ったような潔さと、信じる強さを持ったキャラクターたちは、一体どうしてこの世に誕生したのか。それはきっと、今私が書いたこの記事の内容と、無関係ではないでしょう。

 

 

木には根がある

 

何事も端緒があり、根幹があります。そしてそれは往々にして、紐解いていくと『圧倒的な威厳』に繋がっている。まるでそれは『大きな大きな木の根っこ』に等しい。その根から実に何兆もの枝が生え、色とりどりで思い思いの葉を茂らせ、花を咲かせるのです。

 

例えば鳥山明は手塚治虫、ウォルトディズニーに強い影響を受けています。『鉄腕アトム』に敬意を表明し、『101匹わんちゃん』のクオリティの高いアニメーションにかなりの感銘を受けたというのです。手塚治虫などはまさしく『ブッダ』という作品を作っていますからね。

 

 

更に、学生時代、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』を観るために1日に3回、10日間ほど映画館に通っていました。『ドラゴンボール』のタイトルも『燃えよドラゴン』から来ているのです。また、ジャッキー・チェンの映画にもハマり、映画を流しながら、漫画を描くこともあったとか。ドラゴンボールの実写化があるなら、悟空は彼しか考えられなかったと言います。

 

 

 

尾田栄一郎は、『幽遊白書』や『ハンターハンター』の富樫義弘に若い頃に漫画を褒められ、『AKIRA』からは『しねェ!!』などと、カタカナの小文字を使ってしゃべる言葉遣いの影響を受けました。『ワンピース』というのは尾田栄一郎の思想一つで作られているのではありません。それはこの世界に存在する全ての人間にも同じことが言えますね。様々な角度から包括的かつ俯瞰的に考えることは、すべてワンピースの世界を考えて楽しむことに繋がっているのです。

 

ちなみに、『バクマン。』ではこのドラゴンボールやワンピースといった作品がどれだけの存在かということについて触れています。『少年ジャンプ』という超激戦区で王道漫画が勝ち残ることが一体どれだけ難しいか。司法試験に合格するよりも遥かに低い確率なのです。こうした話からも、ワンピースの強さがわかる。

 

例えばルフィは海賊王になるために、激戦区を超える覚悟を持っていますよね。最悪の世代に、七武海や、四皇。倒すのは容易ではありません。しかし、『そんなこと最初からわかってる』と断言し、腹に据えた一本の槍で挑み続けます。その姿勢はもしかしたら、鳥山明を筆頭とした、少年ジャンプやその他の少年誌で同じ時代を生きた戦友たちの存在がなければ、あり得なかったのかもしれません。

 

 

 

『ワンピース』と世界の映画

尾田栄一郎の好きな映画に『バグダッドカフェ』というものがあります。ミス・ダブルフィンガーの「スパイダーズカフェ」は、この舞台をモチーフにしています。

 

 

任侠映画と西部劇が好き。彼は菅原文太が本当に最高のイケメンだと考えています。『次郎長三国志』を偏愛しているようですが、それらであればなんでも好き。ですから、『七人の侍』やそれをモデルにした『荒野の七人』、『マグニフィセント・セブン』、あるいは『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』、『許されざる者』なども彼の好みでしょう。事実、『七人の侍』はワンピースに強く影響を与えているという発言をしているようです。

 

 

 

少年少女に悪影響を与えられないので大声では言えないでしょうが、『山口組三代目』も世界観自体は好きでしょう。高倉健、菅原文太、田中邦衛が出ていますからね。赤犬と黄猿がいる。『座頭市』もそうですね。藤虎です。ここまで来ると高倉健がいつ登場するかですね。重鎮役として登場するのかもしれません。

 

 

 

山口組三代目』と言えば、『ゴッドファーザー』です。これがなければこの映画もありません。この日本版を作ろうとしてかつての東映社長が、当時の三代目に直接交渉してできたのがこの映画でした。

 

 

青キジの松田優作の遺作、『ブラックレイン』も任侠ものです。高倉健と松田優作が、アメリカの名優マイケル・ダグラスとアンディ・ガルシアらと共演した極上のエンターテインメントです。ここでの松田優作はすごいですよ。私は2000本映画を観ましたが、そのどのヴィラン(敵役)にも引けを取らないくらい、狂気的な異彩を放っています。

 

 

アンディ・ガルシアと言えばロバートデニーロやケビンコスナーと登場した『アンタッチャブル』。実在したギャング、アル・カポネに立ち向かった正義の刑事たちの実話ベースの物語です。名作中の名作ですね。そしてそのカポネがいたからこそ、『カポネ・ベッジ』が存在しています。

 

 

 

海賊と奴隷

 

それで言うなら世の海賊たちがいなければワンピースのキャラクターたちはいないですよね!例えば『バーソロミュー・ロバーツ』は敬虔なクリスチャンでした。それがあるからくまは聖書を手にしているのかもしれません。「海賊の黄金時代」最後にして最大の海賊とされています。ロバーツは海賊史上最も成功した海賊とも評されており彼の死は海賊の黄金時代の終焉を意味したと言います。

 

 

その他にも、ハンコックのモデルはゴムを愛したゴム職人のトーマス・ハンコックであるという話も。また、『ワンダーウーマン』を観れば誰もがアマゾンリリーを思い出すことでしょう。

 

 

冒頭の記事に書いたように、私はワンピースマガジンを持っていてもまだすべては見ていません。取ってあるのです。しかし、パッと開いて目に入り、どうしても見逃せなかった部分は読んでいます。10巻の巻末の方に、考古学者のロビンが紐解く歴史コーナーがあるのですが、『海賊と奴隷』のコーナーにある事実は衝撃的です。

 

 

以下は、それを読んで上記の記事に補強した記事。そこにはこう書き加えました。

 

イギリスは奴隷を使って世界各地に植民地を作り、そこで利益を得て、『産業革命』につなげる。映画『マンソンの女たち』では黒人が『1619年にこの地に来た』と言うセリフがある。また、『ワンピースマガジン10巻』にはこうある。

大航海時代以降、カリブ海のスペイン領ではさとうきびを生産するプランテーションが発達した。しかし、プランテーションが拡大するに伴い、労働力が不足するようになってきた。そのような状況下、目をつけられてしまったのがアフリカ大陸の人々だ。

 

更なる詳細は本にあるが、ここにはあのエリザベス女王も暗に関わっていて、この時代の闇が暴かれている。

 

 

 

映画『エリザベス』では、彼女が奴隷ビジネスという『汚い商売』に手を染めて国力を上げていったことについては触れていません。だからこそあの映画は多くの人の心に『名作だ!』、『有名な女王の豪華な話を聞けてよかった!』という感想を植え付けます。私もとても見応えがある映画だとして、映画ジャンル別ランキング女性編の第1位に、しばらくこの映画が輝き続けていました。

 

 

しかし、スペインから覇権を奪ったエリザベス女王も、『大英帝国』の全盛期を築いたヴィクトリア女王も、その背景には奴隷ビジネスや、植民地ビジネスといった『闇の一面』が存在していて、そこにはワンピースに出てくる『世界政府』や『天竜人』のような禍々しい権力の匂いが漂っています。

 

 

この世界にこうした華々しくも禍々しい現実や、人種差別という問題がなければ、ワンピースの世界に『魚人族』も含めたそれらのキャラクターは出てこなかったかもしれません。そうすると、ジンベエは今の姿ではないか、存在しない。時代が人に影響を与え、人が目で見て、耳で聞き、指で触れ、肌で感じたものが思想となり、その思想がクリエーターの作品に影響を与えるのです。

 

 

こうやって人間の歴史やそれを描いた映画を鑑賞することは、確実にワンピースの世界により深く入り込むことを手伝ってくれるのです。ということで、このレベル6には『映画鑑賞の歴史』と『歴史年表』も掲載することができます。また新しく分かったことがあれば、この記事に追記していきます。何しろワンマガまだ全然読んでませんからね!

 

ワンピースを熟知したつもりの皆さん!『まだ』じゃないですか?私と同じでね!そして終わらない(奥が深い)からこそ、いつまでも心が、踊り続けるんだ。

 

 

 

 

 

 

IQ

I drew illustration. Thank you!

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